自営業者や個人事業主は住宅ローンに通らない?
自営業者や個人事業主・フリーランスの方で住宅ローンの利用を考えている方は「自営業者や個人事業主は住宅ローンに通らない」という話を聞いたこともあるでしょう。
結論から言うと、そんなことはありません。しかし、会社員と比べて自営業者は住宅ローンに通りにくいというのは事実です。
本記事では、自営業者・個人事業主・フリーランスで住宅建築をお考えの方に向けて、自営業者が住宅ローンに通るためのポイントや注意点を解説します。
目次
個人事業主・フリーランス・自営業とは
自営業と似たものに個人事業主やフリーランスがあります。初めに、「個人事業主」「フリーランス」「自営業」の違いを整理しましょう。
「個人事業主」は法的な名称
個人事業主は税法上の言葉で、法人を設立せずに継続して事業を行う個人を指します。
法人税と税務上の区分をするために、個人でビジネスをする場合、税務署に対して個人事業の「開業届」を提出する必要があります。
開業届を提出することで税法上の個人事業主となり、一定の控除が適用される青色申告が利用できます。
「フリーランス」は働き方のスタイル
フリーランスは個人事業主とは違い、法的な言葉ではありません。
特定の会社(法人)等に所属せずに業務を行う、つまり「個人で仕事を請け負う働き方」を意味する言葉です。
厚生労働省の「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」によると、フリーランスは「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」とされています。
「自営業」は幅の広い言葉
自営業は『会社に属さずに自ら独立して個人で事業を営む人』を指す言葉です。
そのため、個人事業主やフリーランス、会社経営者なども自営業者に含まれ、対象が幅広くなります。
本記事では個人事業主やフリーランスも含めてお話をするため、自営業という表現をしています。
自営業者は住宅ローンに通らないと言われる理由
冒頭でお話したように、自営業者だから住宅ローンに通らないという事はありません。しかし、会社員に比べると通りにくいというのは事実です。
では、なぜ自営業者は住宅ローンに通りにくいのでしょうか?
会社員と自営業者の収入の安定性の違い
会社員や公務員は、勤務している限り毎月給与が支払われるため、安定した収入があり、返済能力が高いと金融機関に判断されます。
対して個人事業主は、売上が落ちれば直接的に収入が減ります。また、病気や怪我による休業で、収入がゼロになるリスクもあります。そのため、会社員よりも「収入が不安定」と判断されるのです。
そこで金融機関は、個人事業主を会社員とは異なる基準で審査し、返済能力を判断します。つまり、自営業者は自分自身で返済能力があることを証明しなければならないのです。
このことからも、自営業者が住宅ローンに通るための1番のポイントは収入の安定性と言えます。
自営業者の住宅ローン審査のポイント
自営業者が住宅ローンを考える際のポイントとして、代表的なものは以下の5点となります。
それぞれ詳しく解説します。
所得
自営業者の住宅ローン審査では、安定的な所得があることが最重要です。個人事業主の場合は、売上から経費などを引いた「所得」で審査する点には注意が必要です。
また、一般的に3期連続で黒字であることが求められます。税金対策で経費を多く計上し、所得を抑えている自営業者もいらっしゃると思いますが、所得が低い=ローン審査で不利となります。
基本的には3期の平均所得が基準となりますが、金融機関によっては「3期で所得が最も低い年が基準」「1期でも赤字があれば不承認」という場合もあります。
住宅ローンを検討中の自営業者の方は、税金対策も慎重に行ないましょう。
自己資金(頭金)
無理な返済計画は延滞につながります。そのため、住宅ローン審査では収入に占める年間の返済額を示す「返済負担率」が見られます。
自営業者の返済負担率は、以下の式で計算されます。
35%を超えないことが目安となり、理想的な返済負担率は20~25%以下と言われています。
必要な所得のシミュレーション
借入金額5,000万円で35年ローンの場合、年間返済額は約161万円です。その場合、各返済負担率に必要な平均所得は以下のようになります。
※ボーナス返済なし、金利0.7%で試算
個人事業主は継続した安定収入があることを認めてもらうのが難しいケースがあるため、自己資金(頭金)をできるだけ用意するのが望ましいと言えます。また、頭金が多ければ借入額を減らし、返済負担率を下げることにもつながります。
所得に対して返済額が少なければ、収入が不安定でも返済が負担になりにくくなります。また、自己資金を多く用意することで、貯蓄など計画的な資金管理能力があることを示すこともできるでしょう。
税金や保険料の滞納が無いか
個人事業主が住宅ローンに申込む際には、所得税や住民税、国民年金保険料や国民健康保険料などを納付しているか確認してください。
会社員であれば税金や保険料は給与から天引きされるため、滞納は起こりにくくなります。しかし、自営業者は自身で納付を行なうため、滞納が起こりやすいのです。
税金や保険料の滞納は、「税金の支払いを滞納する=住宅ローンも返済できない可能性がある」と判断される可能性があり、住宅ローン審査で大きなマイナスとなります。
自営業で住宅ローンを検討している方は、税金や保険料を期日までに必ず納めましょう。金融機関は審査で提出された確定申告書や納税証明書などの書類から、税金や保険料の納付状況を確認します。すでに滞納してしまっている方は、滞納分を納付してから住宅ローン審査を申し込みしてください。
健康状態
また住宅ローンを組む際、ほとんどの金融機関で団信(団体信用生命保険)への加入が必須です。
団信とは、住宅ローン契約者が返済期間中に亡くなったり高度障害状態になったりした場合に、保険金で住宅ローンを完済し、その後の支払いが免除される保険です。
それにより、遺された家族はローンの心配をせず、家に住み続けることができます。
団信の加入には、健康状態の告知が必要なため、持病や既往症など健康上の理由から団信に加入できない場合、住宅ローンを組むのが難しくなります。
自営業者の健康管理は収入にも直結します。住宅ローンを検討中の方は特に、日ごろの健康管理にも気をつけましょう。
団信について詳しくは「住宅ローン契約に重要な団信(団体信用生命保険)を詳しく解説」ページをご覧ください。
個人信用情報
住宅ローンの審査では、返済能力を判断するために個人信用情報の照会が行われます。
個人信用情報には、自動車ローンやキャッシング、クレジットカードなどの利用・返済状況などが登録されており、支払いを延滞・滞納した記録も残されます。そのため、延滞や滞納があると「住宅ローンの返済もきちんとできないのでは?」と判断され、住宅ローンの審査に通るのは難しくなります。
信用情報機関へは個人でも開示請求が可能です。不安のある方は、住宅ローン審査を申込む前に問い合わせをしてみることをお勧めします。
国内の信用情報機関
個人信用情報の紹介が行なわれる国内の信用情報機関には、以下の3つがあります。
<株式会社シー・アイ・シー(CIC)>
クレジット会社の共同出資で設立。信販(クレジットカード)会社や消費者金融、携帯電話会社などが加盟しており、3機関の中で最も保有する信用情報が多いと言われています。
<株式会社日本信用情報機構(JICC)>
消費者金融が中心となって設立。銀行や消費者金融が加盟しており、加盟している金融機関の数は最も多いと言われています。
<全国銀行個人信用情報センター(KSC)>
一般社団法人全国銀行協会が設置・運営。メガバンクや地方銀行、信用金庫など銀行を中心に加盟しています。
金融機関によっては、1つの金融機関が2つの信用情報機関に加入している場合もありますが、基本的には「銀行はKSCとJICC、消費者金融とカード会社はCICとJICCに加盟している」というイメージです。
このように、信用情報機関ごとに管轄が異なるため、対応する信用情報へ問い合せをしましょう。
住宅ローン控除は自営業者も対象
住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税や翌年の住民税から最大13年間控除できるもので、個人事業主も対象です。
ただし、自営業者には注意が必要な点があります。それは、住宅取得のための優遇措置であるため、事業用の部分は含まれないという事です。
建築する住宅が「店舗兼住宅」の場合、住宅ローン控除を受けられるのは住宅部分のみで、店舗部分は対象外です。また、事業用の面積が建物の床面積の50%以下であることも条件となっているため、事務所用の床面積が50%を超えると住宅ローン控除自体を受けられない可能性が高くなります。
自営業者が住宅ローンに通るための5つのポイント
最後に自営業者が住宅ローンに通るために、心がけるべきポイントを5つご紹介します。
1.住宅ローン審査を申し込むタイミング
自営業者が住宅ローンに通るためには、審査を申し込むタイミングも重要です。
上記のようなタイミングを狙うことで、住宅ローン通貨の可能性を高める事ができるでしょう。
「直近3年、健康状態に問題が無い」というのは、団信での病歴等の告知が基本的に直近3年間となっているためです。
2.他の借り入れをできるだけ減らす
返済負担率には、住宅ローン以外にも既存の借入・ローンなども含まれます。
自動車ローンやカードローン、事業用資金などの借入が多い方は少しでも借り入れを減らす、可能であれば完済することで住宅ローンに通りやすくなります。
3.頭金を用意する
頭金は、借入総額を減らすことで返済負担率を低下することができ、計画性など金融機関からの信用向上にもつながります。
また、自営業者の場合には、頭金が無いと住宅ローン審査さえされない金融機関もあります。20%~30%を目標に、住宅ローン審査に向けた貯蓄を心がけましょう。
4.節税しすぎない
借入を減らすことや、頭金を用意することと逆行してしまいそうですが、住宅ローンを利用するまでは節税はほどほどにしておきましょう。
節税のために経費を増やし所得を少なくすると、住宅ローン審査に悪影響となります。
5.審査に通りやすい金融機関を選ぶ
自営業者向けの住宅ローンに力を入れている金融機関や、フラット35を利用するのも一つの方法です。
そのような金融機関では、以下のように審査が緩和されている場合もあります。
また、普段取引のある金融機関では確定申告の書類だけでなく、事業内容や世帯の資産状態まで考慮してくれる場合もあります。
まとめ
本記事では、自営業者で住宅建築をお考えの方に向けて、自営業者が住宅ローンに通るためのポイントや注意点を解説しました。
「自営業は住宅ローンに通らないというのは誤り」です。しかし、会社員に比べて収入の安定性が不安視されるため、頭金や住宅ローン審査を申し込むタイミングを調整するなど、入念な準備が必要になります。
住宅ローンに通ることでマイホームを手に入れる事ができますが、何よりも大切なのは、無理なく支払いができることです。
病気や事故で収入が減ることも想定して、無理のない資金計画を行ないましょう。
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